登山と言いますと必ずネガティブイメージとして遭難が付いてまわります。毎年、夏・冬には必ず登山者の遭難事故の報道がされますし、事故の大きさだけでなく、件数としても決して少ない数では無く、毎年2000件近い遭難事故が起きています。2014年の累計をみてみても、総件数で1998件、遭難者数2465人、その内死亡者が284名という決して少ない無い数字であり、危険が伴うレジャー・スポーツであるという事は否めません。とは言え、年間400~500万人ぐらいの登山者がいるという事を考えると、件数自体で0.05%程度で有りますし、遭難件数が高い山も偏りが有るので、必要以上に怖がる事も無いでしょう。

必要な事は、山には危険に対してきちんとした心構えを持ち、準備をする事です。ではまず山の危険とはなんでしょうか。それは自然と置き換えても良いと思いますが、便利で快適な社会生活に慣れた人間は、全くの自然の中では生きていく事が難しいという事に理由があるでしょう。道に迷い何日かさまよう事に慣れば食物や水を確保できず衰弱してしまいます。大雨で濡れたままになっていれば体温を奪われ衰弱します。それだけの事で人間は死に至る事もあるのです。

とはいえ、自然の中に入っていく以上すべての危険から遠のく事は不可能に近いです。ただ極力避ける感性を持ち、例え危険に晒されても対応できる準備・適応力があれば事故の確率を限りなく0に近づける事はできます。次に必要な装備ですが、装備は危険な状態を減らし、また危険に晒された時の対応に役立つものです。例えば専門特化した登山靴は、足への負担を和らげ、けがや体力低下を防ぎます。レインウェアは大敵である雨風を凌ぎ、体温を保ってくれます。コンパスは道に迷った時の道しるべとなってくれます。このように自然の中で活動する際の装備は危険を防ぎ遠ざける手助けになるのです。

次に危険を感じたら予定の中止の判断をする事、これはとても重要であるにも関わらず、実践において実行されないケースが多く、また事故原因の多くはここからきている確率が非常に高いです。ようやくとれた休日、仲間とかなり前から打ち合わせ決めていた日程を、大雨・大雪では中止するかもしれませんが、怪しいぐらいの天気では、決行する人の方が多いのではないでしょうか。ただ、そうして決行したとしても、これは危ないと感じた時に引き返す決断がきちんとできるかどうかですね。

何年か前、北海道の登山ツアーで9人もの死者を出した事故では、経験の長いインストラクターが居たのにもかかわらず大事故となってしまってます。ツアー決行を優先し、引き返すタイミングを失ったところに一因が有ると言われています。そして登山を甘く見ていたという事も大事故になった一因であり、危険に備えた心構え、準備ができていなかった事も大事故に繋がったと分析されています。しかし危険ときちんと向き合い、備えをきちんとしていれば、限りなく安全に登山を楽しむことはできます。登山は危険で有る事を知り、危険と向き合えば安全は保てることを学びましょう。